未来を拓く君たちへ 田坂広志
旅人がある街を通りかかりました。
その町では、新しい教会が建設されているところであり、
建設現場では、2人の石切職人が働いていました。
その仕事に興味を持った旅人は、
1人の石切職人に聞きました。
あなたは何をしているのですか。
その問いに対して石切職人は、
不愉快そうな表情を浮かべ、
ぶっきらぼうに答えました。
この忌々しい石を切るために、
悪戦苦闘しているのさ。
そこで旅人は、
もう1人の石切職人に、同じことを聞きました。
するとその石切職人は、
表情を輝かせ、生き生きとした声で、
こう答えたのです。
えー今私は、多くの人々の心の安らぎの場となる
素晴らしい境界を作っているのです。
どのような仕事をしているのか。
それが我々の仕事の価値を定めるのではない。
その仕事の彼方に何を見つめているのか。
それが我々の仕事の価値を定める。
この仕事を「人生」に読み替えてみて下さい。豊かに生きる心構えが
見えるような気がします。